胡椒の生産・販売を通じて、カンボジアの未来を輝かせたい。
ふわっと鼻に抜ける、清涼感のある香りと強い辛み。「カンボジアペッパーカンパニー」の胡椒は、まるで摘みたての果実の香りが生きているかのような、爽やかでフルーティーな味わいが特徴です。
カンボジア胡椒の歴史は古く、フランスによる植民地支配の時代から世界最高の胡椒と謳われ、フランスではもちろん世界の食通たちに愛され続けてきました。「カンボジアペッパーカンパニー」のビジネスパートナーの一人である三百田和義さんは、東京でレストラン経営に携わる傍ら、現地でのチャリティ活動を通じてこの格別な香りに出会い、すっかり魅了されたといいます。
「未来を拓くプロダクトストーリー」では、当社がパッケージの企画・制作を通じて出会った素敵な方々やその活動をご紹介。商品開発を行いながら社会貢献に携わるなど、未来につながる新しい事業活動を担う方々にご登場いただき、開発秘話やとっておきのエピソードを伺います。
第1回は、カンボジア胡椒の現地生産と、日本での販売を行う「カンボジアペッパーカンパニー」。「出来上がった胡椒の感動的なおいしさを、日本でもぜひ味わっていただきたい。そして、カンボジアの生活文化の向上に寄与できれば」と意気込まれる三百田さんと、ともに製品開発に携わってきたスタッフの広村高範さんにお話を伺いました。
左:カンボジアペッパーカンパニー スタッフ 広村 高範右:カンボジアペッパーカンパニー ビジネスパートナー 三百田 和義カンボジアの人々の暮らしを豊かに。スタートは、そこから。
―カンボジア胡椒との出会いを、教えてください。
三百田:会社としては、2008年にチャリティ活動の一環でカンボジアを訪れたことが、すべての始まりです。私が参加したのは2010年からで、農村部はとにかく貧しく、トイレも井戸もなくてね。「何かこの国の役に立ちたい」という切実な思いに駆られたのを覚えています。当時、東京で焼肉レストランを展開していた私は、まずはプノンペンに焼肉レストランをオープンしました。運営は現地スタッフに任せながら、毎月店を訪れるうちに、この素晴らしい胡椒に出会ったのです。
初めて口にしたとき、「なんだこの香りは! 普段使ってるものとまったく違う」と、大きな衝撃を受けました。聞けば、カンボジア胡椒には約700年の歴史があり、一時は内戦で廃れてしまったものの細々と続いており、現在もフランスでは多くの星付きレストランがこぞって使用しているという。それならば、このとんでもなくおいしい胡椒を自分たちで栽培して製品化し、新たな産業を生み出すことが、社会貢献につながるのではないか、この国の人々の暮らしを少しでも豊かにできるのではないかと、事業を始動させたのです。
まず、胡椒栽培に適した、ミネラル豊富な土壌が広がる南西部コッコン州スレーアンベルに、36ヘクタールの農地を購入しました。東京ドームの約7個分の広さです。そのうちの7ヘクタールで胡椒を栽培、2ヘクタールを養豚場にしました。 豚の糞を加工して池に流し込むと、プランクトンが湧いて魚の餌になる。その池でティラピアとナマズも養殖しています。この栄養たっぷりの水を栽培に利用することで、微生物が活動する肥沃な土が胡椒の木に素晴らしい実りをもたらしてくれる。農薬や化学肥料に頼らない、完全有機・オーガニック栽培を実践しています。
カンボジアの豊かな大地―実際に、どのような方法で栽培されているのですか。
三百田:胡椒の栽培は、苗を植えて挿木をし、支柱となる木にくくりつけてツルを巻かせる方法が一般的ですが、我々はレンガを積み重ねたタワーと、網の中に土を入れて形成した網タワーの2種で栽培しています。それぞれのタワーの高さは約3メートル。最初に苗を植える際、土にごくわずかのコウモリの糞を混ぜるのがカンボジア流なんです。これらは、現地の農家に何度も何度も足を運んで教えてもらいながら、試行錯誤を重ねて実現していきました。
ツルが伸び、大人の木に成長するのに5、6年。最も多く収穫できるのは、7、8年といわれていますから、我々の胡椒も、これからが楽しみな状態です。記念すべき最初の収穫は、2018年の2月。胡椒は、ひと房にたくさんの緑色の実をつけるのですが、その中に何粒か赤く熟した実が見えたら収穫です。現地スタッフが手作業で穂ごと摘み取り、一粒ずつ房から外し、ヘタを取り、色別に天日干しします。1週間程で緑の実は黒く、赤い実はより赤く変色します。
胡椒栽培の様子―開発にあたり、苦労されたことはありますか?
三百田:想像を絶する自然との共存ですから、苦労は限りなくあります(笑)。とくに大きかったのは、栽培を開始して2年目くらいに、カンボジアで数十年に一度という台風が来て、みんなで汗水流して必死で作った網タワーが、4割程崩れてしまった。台風が来ることはまったく想定していませんでした。レンガタワーは無事でしたが、今でもそのうちの1割は戻せず、使えないままです。
広村:あと、言葉の壁もありましたね。現地で活動するときは、もちろん通訳がいるので問題はないのですが、我々もずっと現地で指示を出せるわけではないので、どうしても遠隔で伝えることになりますから。
三百田:胡椒は、栄養を集中させるため、年に一度50%くらい間引かないといけないのですが、ちゃんと説明したつもりが全部摘み取られてしまったことがあって……。2年間は収穫ゼロです(笑)。こういうこともあるのか、と愕然としましたよ。
「これは、おいしい!」
名だたる料理人が、太鼓判。
―いよいよ収穫!その出来は?
三百田:収穫した胡椒は、想像以上のおいしさでした。自分で言うのもなんですが、他のカンボジア胡椒よりもはるかにうまい(笑)。最初は、現地の市場に卸して地元の産業発展のためになればと考えていたのですが、あまりのおいしさに、ぜひ日本でも販売したいと。そこで、一度日本の食のプロに味を見てもらうことにしました。カンボジア胡椒は、もちろん既に日本でも販売されています。芳醇な香りと刺激的な辛みが特徴の黒と、ほんのり甘みを感じるマイルドな赤。実際お店で使用されているミシュラン2つ星の寿司店の大将に試してもらうと、口にするや、「あなたの勝ち。とくに赤は、和食にも合うね」と即答。自信が確信に変わった瞬間でした。その他、食べログランキングで上位を占める居酒屋や焼き鳥屋などからも、みな大絶賛をいただいています。
広村:今回、日本での本格販売に向けパッケージデザインを一新。リトルパッケージさんにお願いしてからご提案いただくまでのスピードはもちろん、こちらの意向を汲んでくださった高級感のある仕上がりに、スタッフ一同満足しています。本当においしい、いい胡椒ですから、愛される商品に育てていきたい。期待も高まっています。
伝統の味を守り、カンボジアの未来につなぐ。
―今後のビジョンをお聞かせください。
三百田:胡椒は、自然が相手の農産物です。常時たくさん採れるわけではないので、まずは味のわかる方に使っていただきたい。より多くの料理店で使っていただき、将来的には「胡椒といえば、カンボジア産が当たり前」という時代になるほど、広がって欲しい。また、日本ではあまり馴染みがありませんが、生胡椒のおいしさも伝えたいと考えています。収穫してすぐに風味を閉じ込めた生胡椒の塩漬けのおいしさは、絶品です。今後ぜひ商品化したいと思っています。
―最後に、お二人の、お気に入りの食べ方を。
三百田:カンボジア胡椒は、何にでも合うんです!塩分と違い、摂りすぎてむくみが出ることもないですしね。市販のレトルトカレーにパッとかけるだけでも、一気に高級感がアップします。香りの影響力を、実感しますよ!
広村:スープに入れても、フライにかけてもおいしい。豚汁も、パスタも激変します。
三百田:あと、卵かけご飯もおすすめです! 熱々ご飯にバターをのせて、たまり醤油をかけて、最後にカンボジア胡椒!食べたくなってきた(笑)。
「胡椒畑の傍に建てた小屋で寝ていて、枕元の箱を動かしたらサソリがいたとか、なかなかにサバイバルな経験も。いろんな虫にたくさん刺されましたしね(笑)。ようやくここまで来たか、という感慨でいっぱいです」と笑う、三百田さん。
「カンボジアは、首都から離れるとほとんど何も産業がなく、今もとても貧しい国です。でも、人々の笑顔は最高なんです。その笑顔をもっともっと増やしたい。土地の豊かな恵みに感謝しながら、彼らが分かち合う穏やかな暮らしを守りたい。そして、カンボジアに恩返しをしたいと思っています。そこまで、頑張りますよ!」
5、6年の歳月をかけて成長した胡椒の木から実が採れるのは、約20年。今後の「カンボジアペッパーカンパニー」の活躍が、楽しみです。
話者プロフィール
三百田 和義
Sanbyakuda Kazuyoshiカンボジアペッパーカンパニーのビジネスパートナー。東京、カンボジア、ベトナムで焼き肉レストランを経営する傍ら、2010年から胡椒栽培に取り組む。広村 高範
Hiromura Takanoriカンボジアペッパーカンパニースタッフ。三百田氏とともに、カンボジア現地での胡椒栽培から
農園の運営・管理、製品化、販促まですべてに携わる。
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